コンプライアンスについて

労働者派遣法の変遷

労働者派遣法は、その施行から数度の改正を経て現行法となりました。その変遷を簡単にご紹介します。

1986年(昭和61年)7月 施行(対象業務/13業務、受入期間/最長1年)
1986年(昭和61年)10月 対象業務の拡大(13業務→16業務)
1996年(平成8年)12月 対象業務の拡大(16業務→26業務)
1999年(平成11年)12月 対象業務の原則自由化(一部禁止業務を規定) 派遣受入期間の制限(自由化業務/最長1年)
2000年(平成12年)12月 紹介予定派遣の解禁(面接禁止)
2003年(平成15年)3月 対象業務の拡大(医療業務の部分的解禁)
2004年(平成16年)3月 派遣受入期間の延長 (26業務/制限撤廃、自由化業務/最長1年→3年) 対象業務の拡大(製造業務・医療関連業務(紹介予定派遣に限る)の解禁) 紹介予定派遣の見直し(面接解禁)
2012年(平成24年)10月 法律名称の変更(派遣労働者の就業条件の整備等→派遣労働者の保護等) 日雇派遣の原則禁止 労働契約申込みみなし制度の創設 グループ企業派遣の規制追加
2015年(平成27年)9月 期間規制の見直し(事業所単位・個人単位) 派遣労働者の雇用安定とキャリアアップ 派遣労働者の均衡待遇の強化 全ての労働者派遣事業を許可制に移行

法律・政令・省令の違い

労働者派遣法に関する法令を確認していると、「政令」「省令」「指針」などさまざまな名称が登場します。
それぞれの語句の意味について、簡単にご紹介します。

法律 国会で制定した法
政令 内閣が法律の範囲内で制定した命令。閣議により決定され、主任の国務大臣が署名し、内閣総理大臣が連署して、天皇が公布する。法律の下位に位置づけられるもの
省令 省庁が法律の範囲内で制定した命令。主任の行政事務について、法律または政令を施行するため、各省大臣が発する。法律の下位に位置づけられるもの
告示 国や地方公共団体など公の機関が、必要な事項を一般に周知したり、法律を補完する法規としてなされるもの。国の機関の告示は、官報に掲載され、地方公共団体の告示は公報に掲載される
指針 国や地方公共団体など公の機関が、必要な事項を一般に周知したり、法律を補完する法規としてなされるもの。国の機関の告示は、官報に掲載され、地方公共団体の告示は公報に掲載される
指針 告示の一形態
通達 上級機関(例えば厚生労働省)が下級機関(例えば労働局)に対して、その機関の権限の行使について指図するための命令

指揮命令者と派遣先責任者の所在

労働者派遣契約で定める指揮命令者や派遣先責任者と、派遣スタッフの就業場所は以下のようにお考えください。

<指揮命令者>
指揮命令者の所在の制限などについては、特に法令上の決まりはありません。
実際に派遣スタッフに対して指揮命令をする立場の方を選任することになりますが、適切な指揮命令を行えるのであれば、必ずしも派遣スタッフと同じ場所にいなくても結構です。
例えば別のフロアにいて電話・メールなどで指揮命令をすることも可能です。

<派遣先責任者>
派遣先責任者は、派遣先の事業所ごとに選任しなければならず、また複数の事業所の派遣先責任者を兼任することはできません。
なお、派遣先責任者は、派遣スタッフに関する就業の管理を一元的に行うという目的で選任するため、基本的には派遣スタッフと同じ事業所の方を選任することになります。

タイムシート(勤怠管理票)の保管義務

派遣スタッフの就業状況を記録したタイムシートは、以下のような役割を持っております。

1. 派遣先管理台帳における記載事項の一部

(派遣スタッフの就業実態の把握)

2. 派遣元から派遣先への請求額算出の根拠

労働者派遣法により、派遣先は派遣先管理台帳を作成し、当該台帳に派遣労働者ごとに、派遣労働者が就業した日、就業した日ごとの始業・就業の時刻、従事した業務の内容などを記載し、且つ記載事項を月に1回以上派遣会社に対して、通知しなければならないとされています。
従って、タイムシートの派遣先控えを上記1の「派遣先管理台帳」における「派遣労働者が就業した日、就業した日ごとの始業・就業の時刻」などの記載と位置づけている場合は、3年間の保存義務があります。

派遣先のセクハラなどの対応義務

男女雇用機会均等法により、事業主は、職場において行われる性的な言動に起因して、雇用する労働者が労働条件につき不利益を受け、又は当該性的な言動により当該労働者の就業環境が害されることのないよう、当該労働者からの相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備その他の雇用管理上必要な措置を講じなければならないとされています。
また、雇用する女性労働者が妊娠したこと、出産したことなどを理由として、当該女性労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをしてはならないことや、妊娠中および出産後の健康管理に関して必要な措置を講じなければならないことが義務付けられています。

本来、男女雇用機会均等法は雇用主と雇用されている労働者との間の法律ですが、派遣スタッフの場合はその就業形態の特殊性から、派遣先もまた派遣スタッフを雇用する事業主とみなされ、男女雇用機会均等法の規定(第9条第3項、第11条第1項、第12条及び第13条第1項)が適用されます。
従って、派遣先は派遣スタッフに対して、男女雇用機会均等法の規定に則った対応を行わなければなりません。